Music Diary

[ 2008.08.29 ]

驚嘆のデビュー Vol.2 メロディ・ガルドー

 メロディ・ガルドーの世界デビュー作がリリースされ、話題にのぼり始めています。

 メロディ・ガルドーは、フィラデルフィア出身の23歳になるシンガー・シングライター。このデビュー作『夜と朝の間(はざま)で』は、全曲彼女の作詞・作曲。グレン・バラットと共同で、プロデュースもつとめています。

 まず注目したいのは、彼女の声でしょう。その絶妙な加減でハスキーな歌声は、印象的で、歌の世界にビターさとやわらかな包容力を加えています。その声で、日常のうれしさや微妙な心の揺れを歌う。

 実はメロディの歌声は、彼女の来歴と分かちがたく結びついているのです。16歳から地元で歌い始め、デューク・エリントンからママス&パパスまで、ジャンル不問、時代不問の歌を歌っていた彼女は、19歳の時に交通事故で重傷を負い、以来、短期記憶障害と光線と聴覚の過敏症と戦う日々を送っているのです。作曲も、後遺症のリハビリで音楽療法に出逢い、はじめたのでした。

 今も忘れる前に曲を書き留める必要があり、聴力保護器具とサングラスが必需品。長く立っていることすら難しい。

 それでもメロディは、言うのです。
「毎日が楽しい。私はいろいろなことを覚えていられないけれど、自分の幸運だけは忘れません」

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 このアルバム『夜と朝の間(はざま)で』にはジャズはもとより、フォーク、カントリー、ブルースなどの要素がちりばめられた楽曲が並んでいます。詞はわかりやすい上、彼女の経験からくる痛みへの共感と、生への肯定が通奏低音として鳴っています。明るい音楽かといえば、そうではありませんが、決して暗くはない。あえていえば、「切ない音楽」なのですね。

 少ない音使いでストーリーを伝えてくるサウンドのたたずまいも、新人とは思えない、的を射たやり方です。
 メロディは、今の時代の(パーティの後のような)「切なさ」の代弁者なのではないでしょうか。

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 そんなメロディの肉声をここでシェアすることで、彼女の人柄の一端を知っていただきたいと思います。

 まず、メロディに聞きましょう。ミュージシャンとして、自分の名前が運命的だと思ったことはありますか?

「色々な意味で運命的かもしれないわ。わたしが事故にあったことだって、運命的なことよね。メロディって、母がつけてくれた名前なのだけれど、母はもしかしたらわたしが音楽に携わることをどこかで予知していたのかも。不思議ね」

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 そのお母さんは、たいへんな音楽好きでした。ですから、メロディは幼い頃からジェームズ・テイラー、コール・ポーター(作曲家)、ペリー・コモを聴いて育ったといいます。なかでも、大のお気に入りはデューク・エリントンだったのです。

 事故の前と後では、音楽に対する想い、音楽へのフォーカスの仕方が、変化したのでしょうか? そうだとしたら、どのように変わったのでしょう?

「音楽に対する気持ちが深まりました。ふるまいとしても、それまでは聴いたことのない音楽も、聴くようになった。音楽をジャンルに分けるのは好きじゃないけれど、クラシックも聴くようになりましたね。ドビュッシー、ショパン、オペラなどですね。後はブラジルの、カエタノ・ヴェローゾ、ジョアン・ジルベルト、ガル・コスタ。幅広く聴くようになったのです」

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「時間制限」のなかで、メロディはどのように作曲しているのでしょうか?

「とにかく短時間で曲を書く。とてもシンプルよ。ひらめいたときに座って、曲も歌詞も書き上げるんだけど、全部で20分くらい」

 サウンド作りで、心がけた点は?

「曲についてのヴィジョンは、わたしのなかでは出来あがっているのだけれど、それをレコーディングで表現するのが大変だった。わたしにとっては、小さな音がとても大切なのね。たとえばドラムにしても(速く勢いよく叩くことは簡単なんだけれど)、わたしが欲しい「小さな音」を出すためには、静かに、ゆっくり叩かなければならない。ミキシングの段階でもどんどん、どんどん、余計なものを削ぎ落としていくから、とても繊細なものになっていくんだと思う。でもわたしにとって、美とは音の間の空間にあると思っているし、わたし自身相当のミニマリストだから、苦労はありました。
 でも、このアルバムが人の心を動かし、安らぎや癒しを与えられたら、どんなにうれしいか。リラックスさせてくれる音楽、そしてスローダウンさせてくれるサウンド。わたしはそういう音楽が好きだから、そんな音楽を作りたかったの」

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 彼女は、デビュー作にして、その願いをかなえてきました。今、次作のレコーディング中で、プロデューサーはジョニ・ミッチェル、マデリン・ペルーで知られるラリー・クラインがあたっているといいます。

 そういえば、失踪問題がとりざたされていたマデリンは、今どうしているのでしょう。わたしは、彼女の繊細な音楽も内面も同様に好きでしたから、心配しながら、思い出すことが今もあるのです。あんなに騒いでいたメディアも、今はマデリンにふれることもありません。

 そのようにメディアが気ままなことは今に始まったことではありませんが、音楽の質がメロディ・ガルドーに似ているものですから、わたしの老婆心が今からうずくのです。

 メロディの音楽が人々の共感を得るだろうことは、疑う余地がありません。ですから、ゆっくりと、無理をしないでシンガー・ソングラターとしての道を歩んでもらいたい。身体を大切に、自分を大切に、音楽活動をしてほしいと、心から願うわたくしです。

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メロディ・ガルドー
『夜と朝の間』

ユニバーサル ミュージック株式会社
UCCU-1182
2008年8月27日発売
※ 権利者の許可を得ずに、複製することを禁じます。