Music Diary

[ 2006.04.27 ]

トリノから世界へ、ガンバリーニの歌声

 ロバータ・ガンバリーニ。名前からも、イタリア人で、がんばり屋さんだっていう感じがするでしょう?

 ガンバリーニは、以前ブルーノート東京にビッグバンドのシンガーとして来日したことがありましたが、「看板」としては、この春、丸の内 コットンクラブでの公演が、初来日になりました。

 彼女は今年の冬季オリンピックが開催された、トリノ生まれ。両親が熱心なジャズ・ファンだったそうで、さまざまなジャズ・ミュージシャンの来伊公演を見て育ったそうです。12歳のときからクラリネットを学び、歌も次第に歌うようになります。17歳でジャズクラブで活動を始め、98年に渡米。

 「これが生涯最大の転機でした。ハンク・ジョーンズといった大御所のミュージシャンたちと、パーソナルなつながりがほしかった。直に教えを乞いたいと思ったのが、渡米の理由です」。

 ガンバリーニは、今では米ジャズ界でも話題をさらうシンガーになり、そのハンク・ジョーンズが「永年にわたって色々なシンガーを見てきたが、ロバータより優れた人はいなかった」というほどの腕をもつに至り、マイケル・ブレッカーも絶賛しているほどです。

 しかも日本でもデビュー・アルバム『イージー・トゥ・ラヴ』がスイングジャーナル誌ジャズディスク大賞海外ボーカル賞を受賞したんですね。デビュー作でいきなりボーカル賞受賞っていうケースは、今までなかったのではないでしょうか。

 ロバータ・ガンバリーニは2005年ジャズ界最大の話題のひとつであり、華でもありました。誰もがうまい、うまいと、ロバータ・ガンバリーニの歌を誉めます。

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 ですが、ジャズは生を聴かねば真価はわかりません!(そこがジャズの素晴らしいところです。)
 そう思って出かけたコットンクラブでしたが、やはり抜群な歌唱力でしたね。

 バースからアカペラで歌い始めた、タイトル曲〈イージー・トゥ・ラヴ』〉でのテクニックと、高音の澄んだ美しさ。 生前彼女を応援していたベニー・カーターのメドレーでは、スキャットもバカウマでしたが、それ以上に、「タッチ」、「ソフト」といった歌詞を口にするときに、その感触までも伝わってくる表現に魅せられました。

 当然のことですが、イタリア人である彼女にとって英語はわたしたちと同じく、外国語です。ガンバリーニの場合は英詞の発音が完璧で、そのことがジャズを歌う上にどれほど大切か、教えられましたね。

 彼女が生まれもった温かい声質と、たっぷりある声量も「声量70%(しか使わない)ルール」で、余裕をもたせる。それにテクニックを駆使する難曲では、それと感じさせないことを心がけているそうで、どこから見ても「プロフェッショナルの鏡」でした。

 難曲で言えば、特に〈明るい表通りで〉という曲では、1957年録音のディジー・ガレスピー、ソニー・スティット、ソニー・ロリンズの各名ソロをスキャットで正確に再現し、ユーモアまで感じさせたからコットンクラブはもう拍手の嵐でした。

 ドラムの名手、ジェイク・ハナの存在も、ステージに余裕を生む一助になっていましたね。今どき珍しいシンプルなドラム・セットを使っておられるんですが、最少の音で最高の効果を上げる。そのシンプリシティと、味わいや、スティックを落としてもそれがストーリーになる、人物の深みを感じました。

 うれしい誤算が、ひとつ。

 うまさばかりが先行して語られてきたロバータ・ガンバリーニですが、最もよかったのは、バラードだったのです。スツールに座って、しっとりと歌う。でもその歌心で、心底からゆさゆさと揺さぶってくるんですね。

 日本公演のために選曲したという「マダム・バタフライ」を題材にした「プア・バタフライ」や、「ラッシュ・ライフ」で聴かせた深い情感に、客席は水を打ったように静まり返りました。この夜、一目で新入社員とわかるグループが来ていて、盛り上がっていたんですが、彼らを沈黙させちゃったのですから、ガンバリーニの歌の力はすごいと思いました。

 「ストーリーテラーでありたい」と語るガンバリーニの面目躍如ですね。

 楽屋にハローを言いに立ち寄りましたが、すてきな女性。ナイス・バディで、それを妙に隠さず、すてきに見せようと思っている点も,肯定的で好感をもちました。

 両親の話になる時だけ、キュートな少女の瞳になっていましたっけ。

 そう、そう、わたしが行った次の日に、来日中だったローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツが来店し、ガンバリーニの歌にえらく満足し、アルバム『イージー・トゥ・ラヴ』を手に帰ったそうです。

 ロバータ・ガンバリーニ、次作はハンク・ジョーンズとの共演作になるそうで、既にレコーディングに入っているそうです。6月にNYをあげて行われるJVCジャズ・フェスティヴァルでも、ハンクさんたちと出演を決めています。

 楽しみな、ロバータ・ガンバリーニの今後。「イージー・トゥ・ラヴ」とは、まさに彼女のことなんですね。

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ロバータ・ガンバリーニ
「イージー・トゥ・ラヴ」

55 RECORDS
FNCJ-5511
2005/11/23発売

※ 権利者の許可を得ずに、複製することを禁じます。
 
 
 
 

ガンバリーニと 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
入学式で。はい、実はわたしがピカピカの1年生。4月から、洗足学園音楽大学のジャズ科で教えているんです。「最新ジャズ事情」と、「名曲・名唱研究」というリスニングのクラスをもっています。
学生が熱心で、よく授業を聞いてくれて、うれしいかぎり。


4月15日、福島県に行き、幸運にも桜をまた見ることができました。きれいでしたぁ。桜って、心を洗ってくれるようなところがありますね。