Music Diary

[ 2006.06.30 ]

ゲイリー・バートン「夢のカルテット」来日の印象

 風邪をひきました。冬は一度もひかなかったのに、暑くなってきた今なぜ?、とちょっと口惜しい想いですが、雨にぬれたあと地下鉄に乗って、冷房でやられたのでしょう。(これからはもっと大きな傘を買いましょう。それに大降りの日は、レインコートを着ようと思いました。)

 よくよく思いかえすと、わたしは梅雨の入りばなに風邪をひくことが多いんです。雨と湿度に弱いせいかもしれません。先入観念をもつのはよくないけれど、とにかく梅雨に弱い。

 ま、風邪も「休みたい!」という身体からのサインなのでしょうから、悪いことばかりではないわけで、毒出しと思って鍋など食し、自分を甘やかしました。(風邪ひく前にペースダウンできたら、ひかないのよね。ハイ。) 今はすっかり直ったものの、直るまでの時間が長くなったようで、最近「ものもち」が良くなった気がします。今の風邪は、咳にきますから、あなたもどうかご自愛ください。

 さて、ゲイリー・バートン(vib)が「夢のカルテット」を率いて来日公演をした。その印象を今日は書きましょう。

 その「夢カル」は、パット・メセニー(g)、スティーブ・スワロー(el.b)、アントニオ・サンチェス(ds)と、というすごいメンバー。5月27日から6月3日までブルーノート東京のステージに立ったのですが、このカルテットでワールド・ツアーが予定されているなか、世界に先駆けての来日公演になりました。

 ゲイリー・バートンがこのツアーを敢行したのは、この機会を新たな出発点ととらえるという思いからだといいます。2005年に、永年つとめたバークリー音楽大学の学長兼副理事長を辞任。今まで以上に自身の音楽活動に邁進するという、決意の表れだったのでしょう。

 '70年代中盤、ゲイリーは当時まだ20歳だったパットの才能に目をとめ起用し、名作を残しました。パットにとってもそれらのセッションでレコーディング・ミュージシャンとしてのスタートを切ったわけで、ゲイリーは恩師であり、恩人でもあります。これまでに2度再会レコーディングが行われたましたが、ツアーにでるのは、実は今回が初めてなのです。

 立ち話でしたが、パットが次のように話していました。

 「今まではなかなかタイミングが合わなかったけれど、今回のチャンスばかりは逃せないと、参加させてもらったんだ。こうしてゲイリーやスティーブの音を浴びながら、同じステージに立てるなんて、うれしくてならないね」。

 そのスティーブ・スワローは、ゲイリーが67年に初めて結成したグループのメンバーでもあります。そこにドラムスは、パットが全幅の信頼をよせるメキシコ出身の、アントニオ・サンチェスが起用されました。

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 演奏は、ゲイリー・バートンを核に、そのビブラフォンの演奏を活かす、成熟した響きをもつものでした。

 チック・コリアの〈シー・ジャーニー〉で始まり、カーラ・ブレイの〈オルホス・デガート〉ではビブラフォンの音色を活かしながら、2マレットの強みで不協和音をおりまぜ、観客を音のラビリンスへ誘い込みました。

 パットは恩師を引き立てるべく、必要以上に前面に立つことはなく、ゲイリーとの微妙なシンコペートをきかせたユニゾンや、バッキングでの色彩豊かな演奏に注目すべきところが多かったですね。

 ですが、パット作曲〈クエッション・アンド・アンサー〉になるや、途中でギター・シンセにもち替え、ぐいぐいとテンションをあげたのです。そのでのサンチェスの立体感をもつドラム・ソロは、若さが漲り、ということは少々浮いていたんですが、聴きものだったことは確か。

 キース・ジャレットが書いたバラード〈コーラル〉に、デューク・エリントンの〈アフリカン・フラワー〉と、メロディが美しい曲が多く選ばれていましたが、それも同カルテットの成熟度の高い音楽性にマッチしていました。

 「成熟」ということは、つまり「これから何かすごいことを創造するぞ」という意欲や改革精神は聴かれなかったということですが、再会、そして初ツアーをことほぐ4人の技とハーモニーが美しく、それはそれで「良いものを見せてもらった」という、温かい印象を残しました。

 会場になったブルーノート東京は、高額のミュージック・チャージをものともせず20歳?60歳代までの幅広い観客層でうまり、熱心に傾聴。最後にはスタンディング・オベイションで応える観客もいて、この夢のカルテットのキックオフにふさわしい温かさで応えたのでした。

 音楽とミュージシャンシップの美しさと、歳月がかもしだす信頼を感じた公演だったと、思いました。

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 おまけに、パットから新作の報告があったので、それも書いておきましょう。新作が2枚分レコーディングを終えたというんですが、それがあのブラッド・メルドーとの共演なのだそうです。ブラッドとのデュオを中心にした1枚と、もう1枚はブラッド・メルドー・トリオ(ラリー・グラナディアb、新加入のジェフ・バラードds)とのカルテットが中心で、少しデュオという編成だそうです。

 ブラッドがジョシュア・レッドマンの録音に参加したごく初期の70年代から彼のピアノを絶賛してきたパットのこと。2人の音楽に邁進する姿勢や、内向的なところがうまくリリシズムに昇華しているところも似ていますから、この2人があわないわけがありません。

 「ブラッドがトリオで来日する(9月16日、東京オペラシティ他公演)秋に、ぼくもまた東京に来てプロモーションするというのは、どうだろう」

 そうパットに聞かれ、わたしが賛成したのは言うまでもありません。

 秋には、またパットの新作のご報告ができることでしょう。一緒に楽しみにしていましょうね。

パットから今回の来日時、演奏直後にもらったピック(自慢)

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ゲイリー・バートン&フレンズ
「リユニオン」

ユニバーサル ミュージック クラシック
UCCR-9009
2002/06/21発売


90年発表作品のリマスター再発盤。メンバーは、ゲイリー・バートン(VIB) パット・メセニー(G) ミッチェル・フォアマン(P) ウィル・リー(B) ピーター・アースキン(DS)


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