Music Diary
[ 2006.12.27 ]
お正月休みに観たい音楽DVD8作
今日はお正月休みに向けて、音楽DVD8作を、ズラッとご紹介しましょう。
まずユニバーサルから初回再生産限定特別価格でリリースされている、6作品からまいりましょう。昨年リリースされたものですが、今がお得なので、お勧めするのに書きますね。
ジェイミー・カラムが2004年ブレンハイム宮殿の中庭で行ったコンサートの全貌と、USツアー時のドキュメントやインタビュー等、これを見れば人気急上昇中のシンガーのすべてが解るという作りの映像作から。
ブレンハイム宮殿の暮れていく空の色の変化を見るだけでも、目の保養。ジェイミーの真のエンタテイナーぶりが、全編から伝わってくるんですね。観客ののせ方が強引かなって最初思うかもしれませんが、グランドピアノの上ではねてまで、客のアプローズを買おうとする彼の根性が、わたしは嫌いじゃない。だって、そんなことしたら、レンタル楽器会社からの弁償代も大変なのに、あえてやっちゃうプロ根性が好き。
もちろん、最も高く評価したいのは、彼の「声」なのですが。あの小柄で、ビリー・ジョエルに似た声といいますか、「若い頃のミッキー・(カーティス)の声にそっくりだよね」と言っておられたのは元祖F1レーサーの式場荘吉さんでした。シンガーって、「声」が勝負ですからね。いくら巧くっても、「声」に特質がなければ凡人。「声」に個性がある人しか、永くは活躍できません。
ひとつ文句をいうとしたら、すべてを見せすぎていることかしら。USツアー分を、もったいぶって短く削っていたら、満点でした。
ダイアナ・クラールは、賛否両論を巻き起こした、2004年の『ガールズ・イン・ジ・アザー・ルーム』ツアーを完全収録。オリジナルにかける熱き想いが聴ける。
今までにも書いたように、わたしはオリジナルで勝負したこのアルバムを評価しているんですが、ライヴにかける頃には彼女自身に世間的な不評が伝わっていましたから、少しすねてる?ま、もともとステージ上で愛想のいい方ではないんですが、そんな感じが、うっすらとステージから伝わってきますね。
クレイトン?ハミルトン・オーケストラとの新作2枚がいいですから、こちらのDVDも早く撮ってほしいですね。今のところ、日本に同ビッグバンドとくるという話は伝わってきていませんから。
さて、ナタリー・コールは新作のR&Bアルバムもいいんですが、この映像作品はヴァーヴ移籍第1弾ディスクにスタンダードをふんだんに加えたもので、王道をいく作り。ゲストに先のダイアナ・クラールを招いているんですが、ダイアナが初々しく見えちゃうんですから、ナタリーの貫禄に敬服。
スタンダードも、お父さんにはかないませんが、うまいですしね。でも、ちょっと上品すぎるかな、歌が。もちろん彼女自身、ナット・キング・コールのお嬢さんですから、正真正銘お嬢さま育ちなんですが、新作を聴くと、それもかなぐり捨てられるんだって、わかったものですから。じゃ、スタンダードでもやってよと、思わなくはないかな。
でもゴージャス&ラヴリーなショーなんでしょう。その意図通りの、しかも魅せるコンサートであり、DVDです。
ステファン・グラッペリ作品は、もう、掛け値なく素晴らしかった。歴史的価値も高いし、映像も素晴らしいんです。USでカメラに賞が与えられたのも納得です。その上、彼のヴァイオリンが様々の年代別に聴けるんですから!
しかもディスク1では、グラッペリご本人が、他界する1年前に舞踏家イサドラ・ダンカンの寄宿学校に入れられた話ですとか、天才ジプシー・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトとの出逢いや活動を語るんです。それも、彼らの映像つきで!わたしは、動くイサドラ・ダンカンは初めて観ました。創作舞踊の祖といわれていますが、その意味がわかりました。ジャンゴは、火事のこと、怪我のこともグラッペリによって話され、演奏もふんだんに観ることができました。こんなにジャンゴの演奏を映像で観るのも、初めて。と、お初は多くて、感動しました。
ディスク2では、ビング・クロスビーらとの共演シーン、7曲のミュージック・クリップ等と、記録としても音楽としても素晴らしいのです。わたしはお正月に、このDVDを見直します。あぁ、今から楽しみです。
カエターノ・ヴェローゾは、2002年に発表した『ノイチス・ド・ノルチ?北の熱い夜』を中心にした、ライヴを収録したもの。知的にして官能的なカエターノのステージは、いつだって必見なのです。
こちらは、ブラジルものと、シブくて色っぽい男が好きな人なら、必見。わたし、「ちょい悪オヤジ」ってことばもコンセプトも嫌いなんですが、自分のことそう思っていたら、このDVD観たら確実に反省しますね。反省しろ。
ちゃんと説明しなくて悪いけれど、これもお正月の楽しみなので、先に行きます。以上6映像作品が、ユニバーサルからのものでした。
さて、ニーナ・シモンの『ライブ・アット・モントルー 1976』にも感動しました。やっぱり、もう天国に行ってしまったミュージシャンの場合、DVDはパワー百倍ですね。これは、70年代のニーナを初めて映像で見られるという貴重な作品なんです。ちょうどアルバムの無い時期に当たるので、お宝度は特に高い。ニーナ・シモンの、地の底から響いてくるかのような迫力ある歌声。弾き語りの神業です。〈スターズ/フィーリング〉のメドレーでは、連呼される悲劇の女性シンガーたちの名前まで音楽に聴こえます。
ボーナス部分では、ニーナの代表曲である〈マイ・ベイビー・ジャスト・ケアーズ・フォー・ミー〉〈アイ・ラブ・ユー・ポーギー〉などもたっぷり聴けます。即興の妙も、瞬きしない眼差しも、ピアノをたたくように弾く姿も、どれもすべてがニーナ流。公民権運動の旗手の「男前な」コンサートを、ぜひ堪能してください。
さて、次はハンク・ジョーンズです。今年7月に発売された『ライブ・アット・ブルーノート東京』のソロ、トリオの2作品が、ブルーレイディスク化され、(1枚になり)登場しました。画質&音質ともに極上。おなじみのスタンダード・ナンバーが満載ですから、聴きやすいし、ロバータ・ガンバリーニの回を読んでいただきたいのですが、ハンク翁のピアノは歌詞まで語ることができるんです。
ソロとトリオ両方お楽しみ下さいと1枚になったわけですが、トリオだとジョージ・ムラーツとのレギュラー・トリオがやはりハンクさんがよいので、ソロが孤高の境地です。齢88歳。長生きしていただきたいですね。
本映像作品は、タイトルが示す通り、ビル・エバンス最後のライヴ映像を収録したものです。エバンスが逝去したのは1980年9月15日。この映像がとられたのが、同年8月9日。つまり亡くなる約1ヶ月前の映像なんです。場所はノルウェー、モルデ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル。そこで行われたトリオ演奏3曲とソロ・ピアノ1曲、加えて7分半のショート・インタビューが収められています。
まず驚いていただきたいのが、エバンスのピアノのパワーです。この数年前より、ずっと活き活きしているんです。きっと79年に始動した、マーク・ジョンソン(b)とジョー・バーバラ(ds)とのトリオが、彼に再び創造意欲をもたらしたんでしょう。ご本人もインタビューで、「ベストなトリオだ。クオリティを比べるのは本意じゃないが、性格的には初期(モチアン?ラファロ)のトリオと最も似ている」と言っています。そう、マーク・ジョンソンと合っているんですね。
最後の〈ナーディス〉がハイライト。エヴァンスの長?いソロの後、テーマで3人がひとつになるとき、ゾクゾクする興奮が味わえます。ただ因果なもので、わたしたちはこの演奏の約1ヶ月後にエバンスがこの世を去ることを知っているんですね。その事実をふまえて見ると、そのラスト曲での姿勢はいかにエバンスであろうとも悪すぎるし、アップでの映像は指のむくみを映し出しているんです。
だから鬼気迫る作品なことは確かです。でも、インタビューでエヴァンスの笑顔を見られたのは、うれしかったなぁ。そして足早に会場を去る姿が、急ぎ足で生きたビル・エバンス自身の人生を象徴しているように思えたのでした。
ジェイミー・カラム
「ライヴ・アット・ブレンハイム・パレス」
ユニバーサルミュージック
UCBU-9011
2003年10月22日発売
ダイアナ・クラール
「ライヴ・アット・ザ・モントリオール・ジャズ・フェスティヴァル」
ユニバーサルミュージック
UCBU-9012
2003年10月22日発売
ナタリー・コール
「アスク・ア・ウーマン・フー・ノウズ」
ユニバーサルミュージック
UCBU-9013
2003年10月22日発売
ステファン・グラッペ
「ア・ライフ・イン・ザ・ジャズ・センチュリー」
ユニバーサルミュージック
UCGU-9014
2003年10月22日発売
カエターノ・ヴェローゾ
「ノイチス・ド・ノルチ・ライヴ」
ユニバーサルミュージック
UCBU-9016
2003年10月22日発売
ニーナ・シモン
「ライヴ・アット・モントルー 1976」
ビデオアーツ・ミュージック
VABG-1221
2006年11月22日発売
ハンク・ジョーンズ
「レジェンド・オブ・ジャズ?ライヴ・アット・ブルーノート東京?」
Eighty-Eight's Label
VRXL-8801
2006年11月22日発売
ビル・エヴァンス
「ザ・ラスト・トリオ・ライヴ'80」
バップ
VPBR-12110
2006年6月21日発売







