Music Diary

[ 2006.12.13 ]

トニー・ベネットの暖かい80歳記念作

 暖冬だったお江戸も、寒くなってきましたね。温暖化が、これほど目に見える冬って初めてなんじゃないですか。わたしが小さいころの東京は、もっと寒かったんですよ。雪も多くて、小学校が休校になることもありました。

 わたし、以前は「昔」とか「少女時代」の話をするのが嫌だったんです。まず歳がばれますから(笑)。でも、いつの頃からかしら。昔話をするのも、聞くのも好きになってきたんです。

 歳だって言いたいんでしょう?そうなの、まちがいありません。それでいいと思うんです。最近、自分を受け入れることができるようになってきたんですね。自分のことが、まぁ、いいかと思えるのは、とても幸せです。ウエストが60cmを切っていた20歳代より、恋愛至上主義だった30歳代よりも、今の方が幸せですし、今の自分の方が好きなんです。40歳になったときは、心理的にも仕事面でも先のことを心配して一瞬フリーズしましたけれど、もうそこも超えて、どんどん楽しくなっていく。

 若い人に言いたいんですけれど、若いってとってもしんどいことなんですよね。悩んでいても、当然です。でも、人生だんだん楽に送れるようになってきますから、先を楽しみにしてください。

 アンチ・エイジングばやりの昨今ですが、アンチというと、年齢と戦っているみたいで好きな呼び方ではありません。グッド・エイジングとか、ワンダフル・エイジングとか、呼んだ方がいいのに。言霊っていうでしょう?自分でだしたことばを必ず自分は聞くわけですから、どうしゃべるかには、気を配りたい。その呼び方は、変えた方がいいんじゃないでしょうか。

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 わたしは、ジャズのミュージシャンとの出逢いから、「年齢のせいでxxxができない」って思わなくなったのかもしれません。だってジャズの世界では、40、50はひよっこ。渡辺貞夫さんが73歳。トニー・ベネットが80歳ですよ。と?ってもそんな風に見えないし、前向きなエネルギーは若者以上。ハンク・ジョーンズなんて88歳なのに、また「クリスマス・ギフト」というコンサートで貞夫さんと共演するために、12月半ばに日本にやってくるんです。飛行機に長時間乗る長旅ができるだけでも尊敬に値するのに、人前でピアノ弾くんですから。それも味わい深く。素晴らしいとしか、言いようがありません。

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 今話にもでた、アメリカが誇るシンガー、トニー・ベネットが80歳を祝って、80歳記念作を放ってきたので、今日はそのアルバムのことを書きます。

 新作の名は『デュエッツ:アメリカン・クラシック』。アメリカが生んだスタンダードを、超有名歌手とデュエットするという趣向です。多くのシンガーたちが、お祝いにかけつけたというところですね。

 生前「トニーの歌だけはお金を払っても聴く」と言った、ショービズのドン、フランク・シナトラもやった試みです。違うのは、シナトラが自身の声を別ドリしたのに対して、トニーはあくまで皆がいっしょに音楽することを第一に考えたこと。だから、アルバムから伝わってくる空気が、どこまでも暖かいんです。

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 参加したシンガーが、とにかくすごい。ポール・マッカートニーとの〈ヴェリー・ソート・オブ・ユー〉では、2人が歌う想いのたけが伝わってくる出来で、じつにお見事。ポールがこんなにスタンダードが巧いなんて、考えていませんでした。

 巧いNo,1は、バーブラ・ストライザンドでしょう。喜劇王チャップリンが作詞・作曲した〈スマイル〉を、トニーと熱唱します。これがバカウマ。バーブラの声も、年齢を超えていて驚愕ものです。

 若手では、U2のボーノも登場しますが、驚くなかれ、トニーの歌声がボーノより張るんです。一番若い20代代表のマイケル・ブーブレは「トニーにスタンダードを次の世代に渡すんだよと、バドンを手渡してもらったような気分になったな。シンガーとしてというより、人間としての目標がトニーのような人になることなんだ」と、熱く語っていました。

 Mostソウルフルなテイクは、スティーヴィー・ワンダーと歌った〈フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ〉です。トニーがしっとりと歌い上げれば、スティーヴィーはこぶしを回してゴスペル風歌唱で迫ります。彼のハーモニカとの絡みに、ぐっとくること、請け合います。演奏が終わるとトニーさんが言うんですね。「スティーヴィー、ワンダーフル」。そんな掛け声や笑い声まで音楽になっている、楽しくて、心温まる作品です。

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 トニー・ベネットの最大のヒット曲に、〈霧のサンフランシスコ〉という曲があります。カラオケでも、オジさんを熱唱させる大人気曲ですが、この『デュエッツ:アメリカン・クラシック』でも、新たにソロで歌われました。これが、いいんです。

 インタヴューしたときに、トニーさんが言いました。

「あの曲は、貧乏で暖房すらろくすっぽ使えなかった少年時代に、父親が言ったことを思い出させる曲なんだ。父がよく言ったものだ。このニューヨークは寒いけれど、西海岸のサンフランシスコに行けば、太陽が燦々と輝いて、楽しい暮らしができるだろう。いつかサンフランシスコに行こうな、とね。そのことばを思い出しながら、いつも歌う。だから歌っていると、自分で泣けてくるんだ」

 そうだったのかと、わたしは思いました。だからゴールデン・ブリッジや街の描写までもが、心を打つんですね。

 トニーさん、お誕生日おめでとう。あなたの暖かい歌が、大好きです。

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トニー・ベネット
「デュエッツ:アメリカン・クラシック」

ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
SICP-1152
2006年10月18日発売


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