Music Diary
[ 2008.08.13 ]
驚嘆のデビューVol.1 エスペランサ
今回から2回にわたって、今年デビューを飾る、フレッシュな才能を紹介したいと思います。
まず、エスペランサ。ウッド・ベース(+たまにエレクトリック・ベース)を弾きながら歌う、23歳。とってもチャーミングな女性です。
エスペランサ・スポルディングは、1984年アメリカはポートランド生まれ。ラテン系の血をひき、英語とスペイン語を話す家庭で育ったそうです。母子家庭でしたが、一生懸命働く母親の愛を受け、「チェンバー・ミュージック・ソサエティ・オブ・オレゴン」でヴァイオリン奏者として活動をはじめ、15歳の時にはコンサート・マスターをつとめていたそうです。地元で「神童」と呼ばれていた理由が、わかりますね。
16歳になると、奨学金を得てポートランド州立大学で、最も若い学生としてコントラバス(ベース)を学び始めます。そして1年半後に、次なるステップを目指してバークリー音楽大学に、これまたフル奨学金を得て入学。
同大で、当時学長だったゲイリー・バートンや、「目利き」のパット・メセニーに見いだされます。そして、うるさ型のパティ・オースティンが彼女をツアーに起用したことから、仕事がきだしたのでした。「あの、音楽にウルサいパティが起用したなら、あの娘は本物だぜ」というわけです。
現在はバークリー音大で講師をつとめつつ、共演者も上記以外にリチャード・ボナ、ブライアン・ブレイド。フォープレイの新作『エナジー』には、ゲスト出演しています。自分のグループでのギグも増え、今は自分の音楽に邁進することが、楽しくて仕方がないのではないでしょうか。
ですから本作『エスペランサ』は、満を持しての世界デビュー作。以前スペインのインディーズから1枚発表していますが、今や世界が相手なわけです。
それが、力みになったかなぁ。よくも悪くもバラエティに富んだ作風で、もう少し的を絞った方がよかった。デビュー作では、自分の魅力を全部見せたいと思うものですが、そうすると、おしなべて「幕の内弁当」のようなアルバムになりがちなのですね。
ジャズ〜ブラジル音楽〜フュージョンとジャンルをまたぐのは素晴らしいことなのですが、曲想もスムース〜ハードと幅が広いので、もう少し「エスペランサのカラー」を感じたいという、欲がでてしまいます。ま、でも、それも許容範囲。彼女の才能の輝きは、本物です。
さて、そのデビュー作。
ブラジルの心とよばれるミルトン・ナシメントが作曲し、ウエイン・ショーターが名作『ネイティヴ・ダンサー』(1974年)でとりあげた、〈ポンタ・ジ・アレイア〉でスタート。この選曲で、音楽好きならすでに心をつかまれてしまうわけです。
スキャットする〈アイ・アドア・ユー〉で実力発揮。楽器奏者だけあって、エスペランサのスキャットは器楽的です。
インストだけで演奏する〈イフ・ダッツ・トルゥー〉は、2管を配したストレート・アヘッド・ジャズ。かなりマジにプレイしています。そして、スタンダードの名曲〈ボディ&ソウル〉は、スペイン語で、軽やかに歌う。5拍子にしていますから、実は凝っているのですけれど。
彼女のベースはかなり骨太で、しっかりとした基礎を感じさせ、そのフレージングも興味深い。歌声は、キュート。スキャットは、先にも書いたように巧いのですが、ベースを弾きながら歌うというスタイルが、最も大きなチャーム・ポイントです。
そんなエスペランサの初来日が、9月初旬に決まりました。まだライヴで見たことはありませんが、映像で見ると、目が離せないくらい魅力的なのですね。華奢な彼女と、ウッド・ベースの大きさの対比、可愛い声としっかりしたベース・ワーク。そんな対比が視覚を通すと、より明確になるからでしょう。
期待に胸をふくらませて、ビルボード東京に足を運ぶつもりです。

エスペランサ
『ESPERANZA』
ユニバーサル ミュージック株式会社
UCCT-1202
2008年08月06日発売
※ 権利者の許可を得ずに、複製することを禁じます。

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2008年9月3日 1st 18:30/2nd 21:30
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